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彼はスキップに似てる。 仔犬みたい。
キスの合間に、絵津はそう思った。
短い息遣い。 肩や胸を這う唇。 まるで人なつっこく飛びつく犬のようだ。
ただ、違うのは肌触りだった。 真路は強く、なめらかで、潮の匂いがした。
「朝、泳いだ?」
頬が重なったとき、耳元で訊くと、低い囁きが返ってきた。
「うん、二条浜で一泳ぎした。 なしてわかる?」
「海っぽい」
「塩辛い?」
息に笑いが混じった。 絵津は、姿勢を変えた真路の首に腕をからめ、次に起こることへ心の準備をした。
「そうじゃないけど」
「海は俺の必需品。 特に夏は」
言い終わると、真路はなだらかに体を沈めた。 絵津の上半身が、大きく反り返った。
ごくかすかな声が聞こえた気がした。
「絵津も俺の必需品」
真路は情熱的だったが、落ち着いていた。 余計なことは言わず、動作でリラックスさせてくれた。
だから、安心感は消えなかった。 ぴったり密着していると、幸せさえ感じた。
動きを止めた後、真路は絵津の横に転がって、うつぶせになった。 右腕の肘を曲げて、顔を埋めている。 波打つ肩が次第におさまっていくのを、絵津は無言で見つめていた。
初めて、彼を限りなく愛おしいと思った。
やがて、真路が顔を上げた。
目と目が合った。
おどけた光が、彼の瞳に宿った。
「泣かねーの?」
「誰が?」
泣くより何より、急に恥ずかしくなった。 絵津は手探りで枕を引き寄せ、ポフッと真路の顔に被せた。
真路は、うなぎのように身をよじり、笑い声を上げた。
「わっ、降参! だから止めれ。 ちょっとこれ……」
枕から抜け出して避妊具を外すと、彼は首を伸ばして絵津にキスした。
「シャワーしに行こう。 洗いっこする?」
シャワーヘッドが二人の手を行き来して、バスルームは窓までびしょぬれになった。
結局、その日二度目のシャンプーをする羽目となり、真路がドライヤーを当ててくれた。
乾かしながら、真路は何度も絵津の髪を持ち上げて鼻に当てた。
「すぐさらさらヘアーにしてやっからね。 んー、いい香り」
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