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部屋は、さっきまでつけていたエアコンの名残で、まだひんやりしていた。
ドアを開けたまま、絵津がクローゼットの棚を探していると、軽い足音がして、真路が背後に立った。
「箱、降ろしたげようか」
確かに棚は高くて、絵津が爪先立ちしても、箱の下に触れるのがやっとだった。
「俺がどんどん上に載っけちゃったから。 取りにくいだろ?」
「じゃ、あの大きめの白い箱」
「よーし」
真路は絵津より二十センチ以上背が高い。 たやすく箱に両手をかけて引き下ろし、絵津に渡した。
指と指が触れ合った。
とたんに、電気のようなものが走り、二人は動きを止めた。
白い箱が、横の床に落ちた。 カタンという軽い音がしたが、二人ともほとんど聞いていなかった。
抱き合って唇が重なったとき、護られているという安心感が全身にしみわたった。
なぜだろう。 なぜ危険と感じないのだろう。 若い男の子と二人だけで寝室にいるのに、絵津は母といるより自然で、ゆったりした気分に包まれていた。
それでも、顔がわずかに離れた後、言ってみた。
「出かけるんでしょう?」
ちょうと目線の上で、形のいい口が笑みを作るのが見えた。
「すごい暑さだよ。 ここにいよう。 遊びに行くのは暗くなってからにしようよ」
こんな誘惑に乗るなんて、と、常識的な大人なら言うだろう。
だが、絵津のほうも誘っていた。 ドアを開けっぱなしにして、わざと真路を入れた。
さっきの女子がいなかったら、こうしたかどうかわからない。 ライバル心? これから起きることへの好奇心か? それとも……。
うなずく代わりに、絵津は壁に歩いていって、フックにかけてあるリモコンのスイッチを入れた。 ウィーンという低い音と共に、エアコンが作動した。
静かな足取りで戻ってきた絵津に、真路が一言だけ尋ねた。
「いい?」
一瞬間を置いた後、絵津はきっぱりと頷いた。
ベッドに向かい合って坐り、二人はそれぞれ服を脱ぎ始めた。
真路がシャツを取り、絵津がスモックを頭から抜いたところで、二人は目を閉じて唇を触れ合わせた。
そのままの姿勢で、ボトムスと下着を体から剥がした。
それからゆっくりと、お互いを腕の中に包みこんだ。
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