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ピンクの水着を着てた子だ。
絵津はすぐ悟った。
初めて会ったとき、詳しく観察していたわけじゃない。 だけど、服を換えていても、動き方を見てパッとひらめいた。
ライバルって、そんなもんだ。
彼女は真路を追って、右肩に手をかけた。 なれなれしい仕草だ。
真路は足を止めて振り返った。 そして、相手が誰だかわかると、微笑んで手を取り合った。
両手を吊り橋のように結び合わせたまま、真路たちは話していた。 眩い太陽光が高い角度から二人を囲んでいる。 じっと見下ろしている絵津の目が痛くなった。
三十秒か、それとも一分。 たいした時間ではなかったはずだ。 真路は片方の手を離し、もう片方を軽く上げた。
別れの合図に見えたが、女の子は握ったまま手を引こうとはせず、盛んに何か言っていた。
絵津が目を逸らせないでいると、真路は思いがけない行動に出た。 つないだ手を高く上げ、もう片方の手を女の子の肩甲骨へ当てると、やさしく、だがきっぱりと、停車したまま待っている白いバン目指して押していったのだ。
相手は驚いて、体をよじって逃れようとした。 そして、バンの戸口に腕を突っ張らせ、全身で乗せられるのに抵抗した。
すると、真路は軽く女の子を横抱きにして、後部座席にポンと置き、ドアを閉じた。
ドアはすぐ開きかけたが、真路が素早く閉め直した。 それから、くるりと向きを変え、片手をポケットへ入れて、彼はマンションのエントランスに向かった。
その背後で、白い車はやや乱暴に発進し、あっという間に絵津の視界から消えた。
急いでエレベーターで降りていった絵津は、宅配ボックスの前で、角を曲がって入ってきた真路とぶつかりかけた。
真路は、足を止めるとすぐ、笑顔を見せた。
「へえ、すっきりしてるじゃん」
「そうかな」
彼がすぐ服装に気付いて誉めてくれたので、絵津は嬉しくなって視線を自分に向けた。
さらっと流したままの髪に、真路の指が触れた。
「外はすげーカンカン照りだよ。 俺、車じゃないから、帽子かぶったほうがいいかも」
「そうね。 取りに行ってくる」
「一緒に行こ」
真路は並んでついてきた。
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