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真路は、もう大人だ……。
そう感じたとたん、むせるような熱さが絵津の胸を這い上がってきた。
次にさりげなく目をやったとき、真路の向こう側に杏色のセミビキニの女子がいるのに、初めて気付いた。 背の高い真路の体にすっぽり覆われて、彼が後ろに上半身を倒すまで見えなかったのだ。
その女子は、二度見直すぐらい綺麗だった。 かわいい、ではない。 美しい。 胸はたぶんBカップだが、上半分にギャザーを入れたホルターネックのブラでCぐらいに盛り上げていた。
彼女は、ストローをニ本刺したトロピカル・フロートを前に置いていた。 一口飲むたびにはしゃいだり笑ったりして、さかんに真路の肩や腕を触った。
なんだか、むっとした。 太陽の光が清浄な白さを失い、ちらちらする薄茶色と黄色のだんだら模様になったような錯覚を感じた。
六口目で、ジュースは空になった。 楽しげに話を続けているテーブル周りを最後に一瞥〔いちべつ〕してから、絵津はそそくさと立ち上がり、空き缶を木製のゴミ箱に放り込んだ。
空は明るいけど、夕立になっちゃえばいいんだ、と思った。 猛烈な雷雨になればいい。 サーフィンなんかしたら海の底に吸い込まれるほど凄い嵐に。
身をひるがえして歩き出そうとしたとき、サクッサクッという軽い足音が跳ぶように近づいてきた。
まさか真路とは思わないから、絵津はまるっきり気にしないで、通りの向こうにあるペットショップを見やり、だらだらと歩きながら当たりをつけていた。
口直しに、むくむくした仔犬でも眺めていくか。
「よう絵津、元気?」
踏み出した足が、かじかんだように縮んだ。
十度ほど前傾したまま、絵津は立ち止まって肩越しに振り返った。
そこには真路がいた。 びっくりするほど明るい笑いを浮かべていた。 まるで、逢えて嬉しくて仕方がないみたいに。
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