表紙
目次
文頭
前頁
次頁
41
気持ちの上で棒立ち状態になったのは、まき子も同じだった。
――プ……プロポーズって……今そう聞こえたけど、耳がどうかしたのかしら――
まき子の聴力は健全そのものだった。 暁斗は確かに、プロポーズと言ったのだ。
口に出してしまったことで開き直れたのか、暁斗はセットを横に押しやって前を空間にすると、緊張のあまりほとんど睨む眼で、まき子を見た。 隼が狙いをつけたような勢いなので、まき子は思わず身を縮めた。
「俺、まき子さんと一緒になりたい」
単刀直入に、暁斗はそう言った。
まき子は彼を見返すことができず、目線をテーブルに下げてしまった。
すると、上に載ったものに、ぼんやりと虹がかかって見えた。 間もなく紙コップのすっきりとした線が歪み、小波が立って揺れた。
そのときようやく、まき子は自分が涙ぐんでいることを悟った。
胸の中は大波だった。 心は波頭までせり上がり、熱を帯びて一面に輝いた。
こんなにも好きだったんだと、初めて知った瞬間だった。
ずっと自分を抑え、本心から目をそらしていた。 婚約者がいたし、年上だし、暁斗の気持ちがわからなかったから。
だが、暁斗は真剣だった。 肩肘張っているようで、どこか頼りなくかすれる口調に、どれほど必死かが表れていた。
「蛯原さんに条件かなわないのは知ってるけど。 大学の先生で家柄よくて、見た目も結構貫禄あって。
でも、一つだけ自信ある。 あいつより、俺と手つなぎたいよね?」
目を伏せたまま、まき子は身動きできなかった。 暁斗の言葉は、紛れもなく真実だったのだ。
表紙
目次
文頭
前頁
次頁
背景:
kigen
Copyright © jiris.All Rights Reserved
SEO
掲示板
[PR]
爆速!無料ブログ
無料ホームページ開設
無料ライブ放送