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-34- ついに発覚
初め、リオネルは表情を強ばらせたまま、じっと動かなかった。
それでも体は自然に反応する。 すぐにキスは一方的なものではなくなり、いつしかクロエは抱き寄せられて、彼の膝に乗っていた。
熱い唇が頬から首筋をたどった。 それからゆっくりと下がり、胸に近づいた。
ベンチの斜め右横で、ガタンという音がした。
リオネルが、瞬時に立ち上がった。 クロエを腕に抱いたままだったので、舞踏靴をはいた小さな足が宙に浮いた。
そのまま重さがないようにふわりとクロエを地面に降ろすと、リオネルはパーゴラの裏手に身をひるがえした。
直後、ブランソー夫人が扇子を大きく揺らしながら現われた。
「クロエ」
「はい」
「今のは誰?」
クロエは息を詰めた。 見られていたんだ!
どうしようもなくて黙っていると、伯母は傍にやってきて、レースの手袋をはめた手でクロエの手首を握った。
「そのことは後で話しましょう。 早く広間に戻りなさい。 ここにいるのは私だけだから、スキャンダルになる心配はないわ」
ブランソー夫人とクロエが連れ立って舞踏会場に戻ると、大歓迎で迎えられた。
貴女がいないと太陽が沈んだようだ、などという派手なお世辞や、お疲れならすぐお宅までお送りさせてください、という下心を秘めた提案まで、求婚者たちの言葉が四方から浴びせられた。 クロエは心ここにあらずの状態で彼らに笑顔を向けたが、いったいどう答えたのか、後で考えてまったく記憶がなかった。
なんとか真夜中過ぎまで頑張って踊りつづけた後、ようやくブランソー夫人から許しが出て、クロエは帰宅の馬車に乗ることができた。
外は相変わらず生ぬるい風がそよいでいる。 たまに勢いを増す夏の風は、馬車の窓からも吹きこんできた。
夜道はランタンの黄色い光では見えにくく、小路に入ると下に何が落ちているかわからないため、大通りを行くことになる。 だいぶ遠回りで、時間がかかった。
その間に、ブランソー夫人は襟元をくつろげ、クロエに手伝わせて窮屈な胴衣の紐を緩めてから、フーッと息をついた。
「ほんとにきついわね、最近の下着は。
ところで、さっきキスしてた男のことだけど」
ずばりと指摘されて、クロエは身を硬くした。
「お父様に言いつける気はないわよ。 私にも若い日はあったんだから。
ただ心配なのは、あなたが私よりずっと真面目だっていう点だわね」
胸に手を当てて、夫人は大きく溜息をついてみせた。
「相手の顔がよく見えなかったんだけど、美男なの?」
質問の仕方がとても気軽だったため、クロエはつい答えてしまった。
「はい」
「そうでしょうね、やっぱり。 若いんだものね」
伯母の表情が、いくらか翳〔かげ〕った。
「でも、まだ引き返せる。 そうでしょう? 自分を安売りしてないわよね?」
深い関係になっていないかと、尋ねられているのだ。 引き返す気のないクロエは、良心の咎めを感じながらも、正直に首を振った。
「してません」
ブランソー夫人は大きく頷いた。
それから、ある話を静かに語り出した。
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