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-24- 来てくれた
やがて朝早く訪れた人々が、引き潮のように去っていった。
まばらになった信徒の列を離れて、クロエは伯母に小声で申し出た。
「あの、告戒を受けたいんです。 しばらくやっていないので」
「まあ、そう」
ブランソー夫人は拍子抜けするほどあっさりと受け入れた。
「じゃ、私はその間、馬車で一回りしてくるわ。 四十分ぐらいで戻ってくるから、終わったら椅子に座って待っていてね」
「はい」
ほの暗い小部屋に入って待っていると、隣で小さく扉の閉まる音がして、神父が来たのがわかった。
そこでクロエは、ささやかな打ち明け話を始めた。 故郷の村で農家の男の子と一緒に鶏を追いかけ、あせった鳥が使えないはずの翼をはばたいて、塀を飛び越えて姿をくらましてしまったこと。 村の酔っ払いが馬車を暴走させていたため、車輪に泥をぶつけていたら跳ね返り、御者台にいた酔っ払いが頭から被って、目だけ白くギョロついていたこと、などなど。
仕切りの向こうで何度か咳払いがした。 笑い声をごまかすように聞こえたのは、考えすぎだっただろうか。
自覚している罪といえば、そういういたずらぐらいだった。 思いつく限りいろいろと並べてみたが、五つも話すとタネが尽きてしまった。
神父はおごそかにクロエをたしなめ、女性らしく淑やかに信仰を持って毎日を暮らすようにと諭した。 クロエは頭を垂れて、素直に反省した。
再び広い教会堂の中に戻ったとき、時間はまだ十五分しか経っていなかった。
もう信徒の人影はちらほらしか見うけられない。 クロエは肩を落としてヴェールを被り直し、目立たぬように柱の前の席に座った。
次の瞬間、背後に人の立つ気配がした。 クロエが振り返ろうとしたとき、肩に手が置かれた。 そして、聞き覚えのある低い声が降ってきた。
「わたしです。 まだお時間はありますか?」
心の中で、何かが弾けた。
同時に胸の奥から、暖炉のような暖かさがじわじわと全身に広がった。
指の長い手で軽く座席に押さえられたまま、クロエは囁いた。
「早く着きすぎたの。 伯母様が珍しく早起きして。 でもまだ大丈夫だと思う。 あと二十分ぐらいは」
肩にかかっていた圧力が消え、リオネルが前に屈んで体温が伝わってきた。
「よかった。 ではあの段を上ってください。 それからオルガンの傍へ」
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