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-17- 社交界にも
あそこで彼に逢わなかったら、どうなっていただろう。
きっと、あのまま落ち込んで舞踏室に戻り、ディアヌの失礼な言葉に反論できずに、古着でデビューしたと言いふらされることになったはずだ。
それでは素敵なお婿さんを見つけるどころか、舞踏会への招待さえ来なくなってしまう。 せっかく父が苦労して作った機会なのに、台無しになる寸前だったのだ。
クロエは銅色のベンチから立ち上がり、両腕を思いきり天に向かって伸ばした。 そして、輝く太陽を抱き取った気分で、目を閉じた。
「やったわ! 私、都会の意地悪娘に勝ったのよ!」
あの人のおかげで。
閉じた瞼に光が広がる。 リオネルという名前を心の中で何度も繰り返しながら、クロエは念じた。
リオネルに素晴らしいことが起きますように。
昨夜は眠くて眠くて、ドレスを脱がせてもらっている最中に、もううたた寝していた。 だから彼のために祈れなかった。
それで、遅ればせながら今、心をこめて願ったのだった。
その後は、伯母も驚くほど順調な社交生活が待っていた。 次の舞踏会でも、その翌週の音楽会でも、クロエを取り巻く青年貴族の輪は消えず、それどころか次第に増えていった。
そして、親しみを見せる女性たちの数もだんだん多くなった。 オーリャック夫人のお茶会で、すれちがった時に肩が軽くぶつかったためクロエがあやまった相手は、にこにこ笑って向こうから話しかけてきた。
「どういたしまして。 あなたがぶっすりディアヌをやっつけた人ね」
ぶっすりディアヌ? クロエは目を丸くした。 すると背の高い金髪の少女はクロエにかがみこむようにして、囁いた。
「ディアヌって、人の噂や中傷を頭に溜めこんておいて、相手が一番困るときにいきなり口に出すの。 後ろからぶっすり刺す殺し屋みたいでしょう? だから陰でそう言われてるのよ」
そんなことをしていたら、回り中敵だらけになるだろうに。 クロエは鈍感なディアヌに驚いた。
彼女が呆れている間も、金髪娘は話し続けた。
「あなたのこと、アデルから聞いたの。 アデルはね、あなたがひどいこと言われたとき、すぐ傍にいたのよ。 それで、代わりにビシッと言い返してやったんだけど、ディアヌは逆に意地になったみたいで、手下を連れてまたあなたを襲ったんですって? よけいなことして悪かったって、反省してたわ」
金髪の彼女も貴族のお嬢様なのだろうが、まったく気取りがなく、話し方がさばさばしていて、まるで町娘のようだった。
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