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表紙

誓いは牢獄で  エピローグ1


 その夜、バージルは堂々とコーネリアの屋敷に、しかも彼女の寝室に泊まった。
 召使たちは眉一つ動かさなかった。 バージルの正体をはっきりと知っているわけではないが、貴族というのはそんなものだと思っていたし、屋敷内の綺麗な小間使いに手を出されるよりいいと考えていた。
 バージルなら手を出してほしい小間使いは、多分いたかもしれないが。



 何十回目かのキスを終えた後、バージルは汗ばんだコーネリアの額から髪をかき上げ、指で愛しげに輪郭をなぞった。
「ようやく朝まで君と眠れるんだな」
 ぐんと伸びをして、コーネリアは改めてバージルに抱きついた。
「夢のようだわ。 本当にこんな夜が来るなんて」
「これからもずっと一緒にいられるようにしなくては」
 かすみがかかったようだった青い瞳に、現実的な輝きが少しずつ戻った。
「まず、州長官のバークリー殿と話し合って、いまいましいジョン・バーンズの奴を完全に消そう」
 コーネリアは忍び笑いした。
「とても役に立ってくれたけれどね」
「それから君を、いよいよわが領地へお連れする。 式は当分できないにしても、正式な婚約を発表しておきたい。 一分一秒でも早く」
「いい所でしょうね」
 コーネリアは夢見るように囁いた。 その唇に柔らかくキスを贈って、バージルは熱心に語った。
「そう。 緑が多くて、なだらかな丘が続いていて、美しい場所だ。 ここと同じくらいに」
「ときどきは、こちらへ戻ってきてもいい?」
「一年か二年ごと、交互に住もう。 それなら公平だろう?」
「ええ!」
 すばらしい提案だった。
「本当に私を大事に思ってくれるのね」
「大事だもの、何よりも」
 ぴたりと寄り添って横たわると、バージルは囁き声で続けた。
「ここの水仙を少し貰って、向こうにも植えよう。 再び巡りあった美しい春の思い出に」
「私を見に来てくださってよかったわ。 二度とあなたに会えなかったら、知らずに素晴らしいものを失っていたのね」
「嬉しい言葉だ。 ありがとう」
 二人は腕を巻き付け合って、幸せな眠りについた。






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