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表紙

誓いは牢獄で  44


 意識が徐々に戻ってきたのは、どれかの部屋の中だった。 目を開く気力がなく、コーネリアは半ばうつらうつらした状態で、じっと横たわっていた。
 最初はただの雑音にしか聞こえなかったが、生気が戻るにつれ、少し離れたところから伝わってくるぼそぼそした話し声が、次第に意味を持ってきた。
「……それじゃ、殺されたキルビーという男は、イカサマ師なんでございますね?」
「そうだ。 他にも、かっぱらい、ポン引き、悪党の用心棒と、ケチな悪事を重ねて、幾つも前科があるそうだ」
「脱獄した後で、ここを隠れ場にしようと思いつき、バーンズ様になりすましたんでございましょうか?」
「おそらくそうだろうな。 日頃の悪い癖が出て、ここでもいろんな物を盗んで身につけていたから、泥棒の仲間割れということで決着がつくだろう。 犯人は、今ごろ遠くへ逃げてしまっているさ」
 それは、召使頭のアンドリュースとトーマスの話し声だった。 もっとよく聞き取ろうと、コーネリアは努力して頭を動かした。 すると、枕にしていたクッションが外れ、床に落ちて小さな音を立てた。
 二人の足音が、すぐに近付いてきた。 そして、トーマスが優しく話しかけた。
「ご気分は?」
 薄く目を開けて、コーネリアは囁きに近い声で答えた。
「だいぶよくなりました。 ご心配をおかけして」
「いいんですよ。 間に合ってよかった」
 そう言いながら、トーマスはスツールを寄せて、コーネリアの傍に腰かけた。
 コーネリアは、霧のかかった脳をはっきりさせようと必死だった。
「どうなりました、あれから? ホリスは?」
 トーマスは皮肉な微笑を浮かべた。
「まだ裏庭にいますよ。 本物のバーンズについて、しつっこくダーリンプルに尋ねているようですが、答えられるわけがない。 彼だってよく知らないんですから」
「知らない?」
 コーネリアは驚いた。 囚人のことならイボの数まで覚えていると言ったじゃないか。
 笑いを収めて真顔になったトーマスは、慎重に言葉を選んで語り出した。
「ダーリンプルの話によると、四月六日の朝、テムズ川の向こう岸に、二人の男が倒れていたそうです。 知らせに来たのは養育院の院長と若い先生。 倒れた男の一人は死んでいて、もう一人は気絶していました。 気絶したほうが相手を襲って刺すところを見たから、ステッキで殴ったと、院長たちは証言しました。
 社会的信用のある院長の言葉ですからね。 裁判所はすぐ信じて、男に死刑を言い渡しました。 男は無一文で、身元を証明するものを何も持たず、ジョン・ジェームズ・バーンズとだけ名乗ったそうです」










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