表紙目次文頭前頁次頁
表紙

誓いは牢獄で  41


 ホレスの自信に満ちた顔を見て、もう駄目かもしれない、と、コーネリアは覚悟した。 バーンズの処刑が中止になったとき、作戦は失敗したのだ。 ジョージ新王という邪魔者のおかげで!
 せめてもの慰めは、バージルがここにいないことだった。 彼を巻き込まないですんだことに、コーネリアは自分でも驚くほど深い満足感を覚えた。 バージルには平和な生活を送ってもらいたい。 そして、一夜の相手をした女が処刑されたことなど、知らないでいてほしい……
 いや、きっと世間の話題になる。 彼の耳にも届くはずだ。 コーネリアは目を見開いた。
 もし彼が知ったら、黙って見過ごせるだろうか。 万一、自分が刺したなどと名乗り出てきたら……!
 コーネリアは必死で気持ちを強く持って、立ち直ろうとした。 彼女はファーディナンド・ランズフォードの孫だ。 毛一筋でも望みがあるうちは、そう簡単に諦めてはいけない。 最後まで戦わなくては!
「どうぞ、証人でも何でも連れておいでなさい。 たとえ、この男がバーンズと名乗っていたとしても、本物だという証拠はどこにあるの?」
 ホリスの目が、狡そうに光った。
「その証人も連れてきましょう。 ニューゲイト監獄からね」

 今度こそ、致命的な衝撃がコーネリアを襲った。 いつもは銀色がかった瞳が、点に縮まり、消える寸前の炎のようにくすぶった。
――ベティだ! さっき、こそこそホリスと話し合っていた、あの後ろめたそうな姿。 ベティが裏切って、秘密結婚をホリスに教えてしまったんだ――
 井戸のことも、ベティがホリスに告げ口したにちがいない。 朝、女主人が窓から乗り出して見ていたのを、奇妙に思ったのだろう。
 万事休すだ。 コーネリアは崩れそうな姿勢を直し、胸を張った。 せめて最後だけは、堂々と真実を認めたかった。
「あなたにはわかっていないのよ。 きっと永久に、私の気持ちはわからないわ」
「その通り」
 少し離れた場所から、別の声がはっきりと響いてきた。


 思いがけない声に、ホリスは素早く振り返った。
 アンドリュースが、どこかほっとした様子で呟いた。
「バージル様。 それに、トーマス様も」


 パッと目の前が白くなった。
 完全に動けなくなったコーネリアの横に、三人の男が進み出てきた。
 バージル、トーマス、そしてもう一人は、ニューゲイト牢獄の看守人、ハル・ダーリンプルだった。










表紙 目次文頭前頁次頁
背景:Star Dust
Copyright © jiris.All Rights Reserved
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送