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表紙

誓いは牢獄で  38


 その夜、コーネリアは固く部屋の錠前をかけて寝た。
 ホリスがこっそり忍んでくることはなかったが、明け方近くになると、誰かが庭を密かに歩き回っているような気配を感じた。 コーネリアは何度もベッドから飛び起き、窓に寄って様子を伺った。
 裏庭には、誰もいなかった。 風のない夜で、穏やかな月が照らす大地は、深い眠りについているかに見えた。
 五回目にベッドへ戻りながら、コーネリアはふと思った。
――まさか、井戸の中からバーンズの亡霊が這い上がってきて、憎い私を探し回っているのでは――
 背筋に氷のような悪寒が走った。 コーネリアは両腕で体を抱き、急いで布団にもぐり込んだ。


 それでも、いつしか眠ってしまったらしい。 朝を告げる小鳥のさえずりで、コーネリアは重い頭を枕から上げた。
 続き部屋のドアが開き、ベティが入ってきた。
「おはようございます。 今日のお召し物は何になさいますか?」
「そうね、ひだ飾りのついたグリーンの服にするわ」
「かしこまりました」
 ベティが衣装棚を探している間に、コーネリアは再び窓に近寄って押し開き、身を乗り出した。
 左下のだいぶ離れたところに、井戸が見えた。 蓋がずれていないか不安だったが、しっかりと閉じていて、何の異変も見受けられなかった。
 ほっとして、コーネリアは体を引っ込めた。


 いつもの時間に起きたコーネリアよりも、ホリスはずっと早起きしたらしい。 階下へ行くと、アンドリュースが現れて、小声で報告した。
「ホリス様は五時に軽いお食事を済まされて、森を散歩してくるとおっしゃってお出かけに」
「そう」
 何を探りに行ったのか。 嫌な気分で、パンとチーズ、ブロスを朝食に頼んで白雁の間へ行こうとしていると、ホリスが裏口から入ってきた。
 朝っぱらから顔を合わせたくない。 とっさにコーネリアは、柱の陰に身を寄せた。 するとホリスは、たまたま通りかかったベティを引き止めて、何事か熱心に尋ねていた。










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