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表紙

誓いは牢獄で  37


 一度去りかけた不安が、倍になって戻ってきた。
 やはりホリスは、何か勘づいている。 ジョン・バーンズがこの世の者ではないと予想しているようだ。
 でも、死体さえ見つからなければ逃げ切れる。 コーネリアは足に力を入れて、踏ん張り直した。
「このところ、誰も訪ねてきてはいませんわ。 お客様なら一晩泊まっていただきましたが。 お二人とも家柄のいい貴族で、礼儀正しい方たちでした」
「聞きました、アンドリュースから」
 面白くなさそうに、ホリスは唸った。
「長官の舞踏会に招かれた人たちだそうですね。 うちには何の誘いもなかったですが」
 ハンカチを出して鼻をかむと、ホリスは当然のことのように言った。
「では、今夜か明日に、ジョン・バーンズを名乗る男がやってくるかもしれないわけです。 あなたに心当たりがないなら、女性一人では無用心だ。 明日まで泊めていただきますよ。 アンドリュース、支度を頼む」
 傍に控えていたアンドリュースは、目でコーネリアに問いかけた。 仕方なく、コーネリアは指令を出した。
「二階のみそさざいの間にお泊めして」
「かしこまりました」
 一礼すると、アンドリュースは音を立てずに去っていった。


 晩餐は盛り上がらなかった。 食欲がなくて鵞鳥の肉をどんどん細かく切り刻みながら、コーネリアは忙しく考え巡らせた。
――ホリスは勝手に筋書きを作って、私が夫を始末したと疑っている。 ほとんど間違いだけれど、結論だけが合っているのが恐い――
 ホリスはおいしそうに料理を口に運んでいた。 蝋燭の灯りで見ると、けっこういい男前だ。 だが、ときどき彼を眺めるコーネリアの胸には、憎しみしか湧いてこなかった。
――何をたくらんでいるのか、明日探り出してやる。 私とこの美しい領地の将来を、あなたの思い通りにはさせないわよ。 悪党のジョン・ジェームズ・バーンズも嫌いだったけど、あなたにはもっと虫唾が走る!――










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