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表紙

誓いは牢獄で  33


 すべての行事は、その晩でつつがなく終了した。
 狩や舞踏会に参加した客たちは、翌朝早くから三々五々、馬車を仕立て、馬を走らせて家路についた。
 コーネリアは、カーリン夫人のお茶会に呼ばれていたため、もう一晩泊まる予定だった。 しかし、昼近くなって、領地から急な使いが早馬で駆けつけて来た。
 それは、召使頭のアンドリュースに命じられたハリーだった。 馬もろとも汗まみれになって到着したハリーは、部屋で午後用のドレスを広げていたコーネリアを探し当て、飛び込んでくるなり、上ずった声で報告した。
「奥方様、お留守中にホリス様が突然おいでになりました!」

 コーネリアは、熱い石にうっかり腰かけたように、素早く立ち上がった。
「それで? 留守だといって帰ってもらったの?」
「いいえ」
 ハリーは、まだ息を切らせていた。
「腑に落ちない話を聞き込んだとおっしゃって、アンドリュースさんや女中頭のダイクスさんにいろいろ訊いて回っておられました」
「どんなことを!」
「のっぽで色黒の男は来なかったか、とか」
 ガンと背中をどやしつけられたような恐怖が、コーネリアを襲った。
 バーンズのことだ。 あの卑しい男が、道に迷ってあちこちで、ランズフォードの名を出して尋ねまくったにちがいない。
 広げたドレスを手早く隅に寄せて、コーネリアは小間使いのメアリに告げた。
「すぐ家に戻るわ。 緊急事態が起きたので帰ります、と、カーリン夫人にお伝えして」
「はい」
 しっかり者のメアリは、すぐ事情を飲み込んで、部屋を出ていった。

 コーネリアは、手を揉みながら窓辺に立った。 彼女に結婚を断わられたホリスは、今では敵といっていい存在だ。 もし万一、夫であるはずのジョン・ジェームズ・バーンズが、井戸で冷たい骸になっているのを発見されたら…… 死刑にされるのは、コーネリアのほうだ!
 バージルは、まだこの邸にいるだろうか。 新しい可能性に気付いて、コーネリアは戦慄した。 彼まで巻き込まれると、とんでもない事件に発展してしまう! もしまだ居残っていたら、一刻も早く会って、バーンズを完全に『闇に葬る』手段を相談しなくては……。
 そう思いつくとすぐ、コーネリアはマントを着て、フードを深く引き下ろした。 それから部屋を忍び出ると、広い二階の廊下を走った。










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