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誓いは牢獄で
32
窓枠がカタカタと音を立てた。 隙間風で蝋燭の灯が狐火のように揺らめいた。
バージルは、体を離して上半身を起こし、片膝を抱えて、燭台のほうをぼんやり見やった。
低い声が、横たわるコーネリアの耳に届いた。
「もうお帰りなさい。 化粧直しをしないと、お開きの挨拶に間に合わない」
熱にひたっていたコーネリアの頭が、はっと目覚めた。 急いで起き上がろうとしたが、全身がけだるくて思うように動けない。 両肘をついて、やっと身を起こし、床に落ちたドレスを手に取った。
気がつくと、バージルが手を伸ばして助けてくれていた。 襞飾りやレースをふんだんに使ったフォーマルドレスは重く、着た後にも山ほどのボタンと紐でつなぎ合わせなければならない。 侍女が数人がかりで着せるという厄介な服装なのだった。
大ざっぱな身支度が済み、二人はそっと部屋を出て階段を下りた。 一階のフロアに足がつくと、バージルは立ち止まって言った。
「それでは、夜の魔法が解けないうちにお別れです。 明日は友としてお会いしましょう」
コーネリアが振り向く間もなく、バージルは背を向けて階段を再び上っていった。 丈高い姿が闇に融けていくのを、コーネリアは黙って見守った。 それから、肩をすぼめるようにして、自らが泊まる部屋に向かった。
空を舞う高揚感は、寂寥〔せきりょう〕に似た気持ちに変わっていた。 情事の後の空虚さが、足を急がせるコーネリアの胸を覆った。
しばらくして大広間に戻ると、楽団が最後のお勤めとばかりにメヌエットを奏で、まだ元気の残っている人々が優雅に動き回っていた。
その輪の中に、トーマスがいる。 よく見ると、エイミーと踊っていた。 コーネリアはほっとして、視線を他に走らせた。
やがて、目立たぬようにバージルが入ってきたのが見えた。 とたんにズキッと胸が甘く痛んだ。
まったく初めての感覚で、コーネリアは我もなく動揺してしまった。 彼と顔を合わせるのが恥ずかしく、急いでマリア夫人の傍へ行って、前のように話しこんだ。
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