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表紙

誓いは牢獄で  28


 これは二人きりで話すチャンスかもしれない。 コーネリアは素早く一計を案じて、トーマスに頼んだ。
「私ばかり楽しんでは申し訳ないわ。 あそこにいるエミリーの御主人も、うちの夫と同じように、仕事でここへ来られなかったんです。 次の曲をエミリーと踊ってくださったら、私も友達に肩身が広くなりますわ」
「承知いたしました」
 トーマスはひょうきんに腰をかがめ、気軽にエミリーに近づいていって、ガヴォットを踊ってくださいと申し出た。

 その隙に、コーネリアはバージルが出たのとは別のドアから、テラスに忍び出た。 すると、庭に煌々と焚かれたかがり火にぼんやりと照らされて、バージルが独り、テラスの柵に腰を降ろしているのが見えた。
 肩にかけていたショールを素早く被ると、コーネリアは彼に歩み寄った。 衣擦れの音で気付いたらしく、バージルはコーネリアを認めるとすぐ、礼儀正しく立ち上がった。
「踊りはまだ続いていますよ」
 低いバージルの声に、コーネリアも囁きで応じた。
「社交などどうでもいいんです。 それより昨夜のこと、カッとなっていて、まだちゃんとお礼を言っていませんでした。
 あなたは私の命の恩人です。 心から感謝します。 私にできることがあれば、何でもおっしゃってください」
 バージルは、少しの間無言でコーネリアを見つめていた。
 それから向きを変え、暗闇の支配する庭園の奥に、じっと目をそそいだ。
 平板な声が言った。
「恩を受けたくないんですね?」
「いえ、そんなことは!」
「わたしの値踏みをしていらっしゃる」
 コーネリアは息を引いた。 そういう考えがどこかにあるだけに、見透かされたというおびえが心を走った。
「あなたは立派な方ですわ。 その証拠に、昨夜の騒ぎを一言もお友達に話されなかった。 トーマス卿はまったくご存じないようですから」
「または、とぼけるのが非常にうまいか」
「えっ?」
 愕然としたコーネリアを見て、バージルは沈んだ笑みを浮かべた。
「冗談です。 トムには何も言っていませんよ。 友達に秘密を打ち明けるのは、自分と同じ荷物を背負わせること。 それだけ余計な気を遣わせる結果になりますから」









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