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表紙

誓いは牢獄で  25


 夕方近くなって、ようやく馬車は、スウィンドンにほど近い州長官の邸宅、ダイスン・アベイの敷地内に入った。
 大陸風に設計された庭園は、様々な色合いの緑に包まれ、ところどころに花開いた早咲きの薔薇が美しいアクセントとなっていた。
 三人が窮屈な馬車から降りて、膝を揉んだりスカートの皺を伸ばしたりしているところへ、長官夫人のカーリンが姿を見せた。
「よくおいでくださったわ。 お部屋はあちらの棟に用意させましたから、荷物を下ろしてゆっくりとおくつろぎになってね」
 ひとしきり挨拶を交わした後、召使いに箱や袋を持たせて、コーネリアはビートン夫妻と共に、すぐ横の離れに行った。



 夜の帳がすっかり下りた八時頃から、舞踏会は始まった。
 大がかりだった。 招待客は百人を越え、広々としたホールからはみ出て、続きの間まで混み合っていた。
 狩は盛況だったらしく、長テーブルの上には獲物の肉が豪華な料理になって、ずらりと並んだ。 人々は賑やかに語り合いながら、盛大に飲み、食べ、踊りに興じた。

 コーネリアは、できるだけビートン夫妻の横にいるようにした。 そうすれば、知らない人には夫妻の娘のように見えて、余計なちょっかいをかけられなくてすむ。 井戸の底に沈んでいる『夫』の作り話を、これ以上繰り返すのは苦痛だった。
 夫妻は、ダンスよりも腿肉のソテーや林檎パイに心を奪われていて、テーブルからなかなか動こうとしなかった。 従って、コーネリアも傍の椅子に腰かけ、扇子を使いながら、マリアや幼友達のエイミー・バークと話をしていた。
 すらりとした金髪のエイミーは、陸軍のエディ・ソーン少佐と婚約したばかりだった。 婚約祝いの直後に、ソーンが軍命令でウェイマスへ転属になったため、エイミーはすっかりコーネリアに仲間意識を持っていた。
「あなたのご主人も、結婚早々よそでお仕事なんですって? お互い寂しいわねえ」
「そうね、ここへ来て楽しんでいていいのかしらと思うくらい」
 上の空で答えながら、コーネリアはさりげなく大きな会場を見渡して、あの青年貴族たちの姿はないか、そっと探した。
 こっちから見つける前に、背後から不意に嬉しそうな声がした。
「奥方! こんな隅にいらしたんですね!」









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