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表紙

誓いは牢獄で  23


 トーマスは、いくらかどぎまぎした様子で頭を下げた。
 一方、バージルはなかなかの役者らしく、コーネリアと目が合っても、広大な湖のような落ち着きを崩さなかった。 まるで昨夜の騒ぎなんか無かったようだ、と、コーネリアは密かに舌を巻いた。



 コック自慢のひき肉パイを賞味し、くるみパンとセージ入りハムを弁当として包んでもらって、若い貴族たちはいよいよランズフォードの屋敷を後にすることになった。
 コーネリアは、バージルと二人だけになれる機会を狙っていた。 だが、彼とトーマスは分身のようにくっついたままで、食事の間も後も離れず、バージルだけと話すチャンスは一度も訪れなかった。
 バージルは、さっと馬に乗った。 しかし、トーマスのほうはコーネリアに何度も礼を言い、手を取ってキスした後も、しばらく離さなかった。
「またアーノルド卿の舞踏会でお会いできますね。 明日の夜が楽しみです」
「お隣りの、といっても三マイル離れているんですが、ビートン様とご一緒するつもりです。 あちらでまだ私を気にかけてくださるご親切があったら、よろしくお願いいたします」
「喜んで! 奥方のためなら苦手なカドリールでも何でも踊りこなしてご覧に入れます」
 まんざら社交辞令でもなさそうな言葉を残して、トーマスはやっと愛馬にまたがり、バージルと並んで門の方へ遠ざかっていった。


 客がいなくなると、コーネリアはすぐ顔を引き締め、灰色鹿の間に足を向けた。 昨夜、蝋燭の光で念入りに調べたものの、昼間の明るい光で見て痕跡がないかどうか、不安に駆られた。
  そそくさと部屋に入ったとたん、コーネリアは立ち止まった。 召使頭のアンドリュースが窓の前に屈み、錠前を調べていた。
「どうしたの?」
 コーネリアの声に、アンドリュースは難しい顔で振り向いた。
「錠が壊されております。 このやり方は、手馴れた泥棒の仕業で」
 そうだ、バーンズが壊した窓を直すのを忘れていた――内心の動揺を隠して、コーネリアは不機嫌に尋ねた。
「どういうことなの? 最近誰かが盗みに入ったと?」
「そのようで」
 アンドリュースは恭しく答えた。
「すぐお部屋の物を調べませんと。 貴重な絵や置物が持ち出されているやもしれません」










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