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表紙

誓いは牢獄で  17


「おっと、こりゃ失礼」
 助けを呼んだら彼女のほうが困ると判断したのだろう。 バーンズは、わりと素直に手を離した。
 袖の上から、コーネリアはしびれた腕を揉んだ。
「どうやって私を探し当てたの?」
「そりゃ、蛇の道は蛇ってやつさ。 悪党仲間に聞いたのよ」
「ここへ来るのに日にちがかかったわね」
 なんでもいい。 男にしゃべらせて時間を稼ぐことだけを、コーネリアは考えていた。
「あっちこっち寄り道しながら来たんだ。 標識が読めなくて苦労したぜ。 田舎ってのは、わかりにくいな。 どこも似たような景色で」
「この地方は風光明媚で有名なのよ」
 気を遣いながらじりじりと下がり、後ろ手で戸棚を探った。 中の左上に、父の剣が飾ってあるはずだ。 あと、もう少し……
 隙間から指を入れると、剣の鍔が触れた。 勇気百倍だった。 掴んで引き出すなり、コーネリアは夢中で突きかかった。

 予想よりはるかに素早く、男は飛びすさった。 そして、燭台をテーブルに置くと、椅子を振り上げ、その脚でコーネリアを挟みつけて、あっという間に剣をもぎ取った。
 怒りで、ただでさえ黒い顔が紫色に変わった。
「てめえ、この俺を殺そうとしやがったな。 思い知らせてやる。 死ぬってのがどんなものか、ぎりぎりまで味わわせてやる!」
 男の指が、コーネリアの喉に食い込み、両側から絞めつけた。 あまりの苦しさに暴れたが、椅子の脚に押さえこまれて、ほとんど身動きが取れない。 眼球が思い切り充血して飛び出しそうになったとき、別の足音がした。

 もうろうとしていたため、何がどうなったか、よくわからなかった。
 ただ、首を絞めていた力が、不意に抜けた。 ゴボッというあえぎが聞こえ、椅子が床に落ちて鈍い音を立てた。
 必死の努力で、コーネリアは戸棚に寄りかかって体を支え、目を見開いた。 すると、床の上に長々と伸びたバーンズの体が見えた。
 その後ろには、金褐色の髪を光らせたバージル卿が、静かに立っていた。










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