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表紙

誓いは牢獄で  14


 その後は、お茶を飲んで、簡単なトランプゲームをやり、すぐ夜になった。
 晩餐がこんなに賑やかなのは、久しぶりだった。 母のヘレナはコーネリアが八歳のときに死に、父のバーナードは五年前に暗殺された。 更に、唯一の肉親として残った祖父のファーディナンドも去年に病死して、広い屋敷に二十一歳のコーネリアだけが残された。
 祖父は、孫娘のために力を振り絞って、長生きしてくれたのだと思う。 成人に達していたコーネリアは、そのおかげで後見を受ける必要がなく、自力で領地を切り回した。 そして、これからもそうするつもりだった。

 だが、やはり孤独は寂しい。 不意にやってきた二人の青年が、コーネリアに気付かせてくれた。 遺言状の条件をようやく満たした今、コーネリアは自他共に認めるこの館の女主人になった。 後は、これからの未来を考えなければ。 そして、もっと人生を楽しまなければ!
「素敵なお屋敷と、屋敷以上に素敵な女主人に乾杯!」
 燭台の向こうに、切子ガラスのヴェネチアングラスが高くかかげられた。 バージルもすぐ応じて、グラスを上げた。
「乾杯」
 微笑んで頭を下げ、コーネリアは熱くなった頬を軽く押さえた。 すばらしい晩餐だった。


 高揚感は深夜まで続き、ひとりベッドに入っても、なかなかコーネリアを眠らせてくれなかった。 何度か寝返りを打ち、まじないを唱えたが、どうにも落ち着かない。 軽く一杯飲んで、心を静めようと考えついた。
 真夜中だし、同じ階に客がいる。 呼び鈴の紐を引いて、小間使いを呼び、音を立てるのは気が進まなかった。
 それで、ベッドをそっとすべり降りてから、燭台を手に取った。 白雁の間に行けば、戸棚にワインが置いてあるのだ。
 ガウンを羽織って、ゆるやかなカーブを描く階段を下りていくうち、コーネリアはふと立ち止まった。
 音が聞こえたような気がする。 手すりに身を乗り出して、耳をすませた。
 気のせいではなかった。 小さく、椅子のきしる音が響いた。 それから、誰かが用心深く歩きまわる靴音も。









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