表紙目次文頭前頁次頁
表紙

誓いは牢獄で  10


 乗っているのが、ヴェールをなびかせた婦人だと知って、二人の若者は驚きを隠せなかった。
「おっ!」
 銃を手にした方の男が反射的に声を出したため、驚いたレインバードが急停止した。 はずみで前足が空を掻き、あやうくコーネリアを振り落とすところだった。
「どう、どうっ」
 なんとか鹿毛の馬をなだめて落ち着かせると、コーネリアは馬上から、見知らぬ若者たちを鋭い眼差しで睨んだ。
「ここで何をしているのです?」
 後ろから、栗毛のブランシェットに乗ったメアリが追いついてきて、口を添えた。
「ランズフォード家の領地ですよ。 断わりもなしに入り込んで」
「申し訳ありません」
 猟銃を横に倒して、茶色の髪の若者が澄んだ声であやまった。
「わたしはトーマス・チルウェル、あそこでスケッチしているのは、友のバージル・アーデンです。 二人でダイスン・アベイに行く途中なのですが、ここの景色があまりにも美しいので、つい長居をしてしまいました」
 ダイスン・アベイの名を聞いて、コーネリアの硬い表情が、少し変わった。
「州長官のアーノルド卿のお屋敷へ?」
「はい、フィッツジェームズ伯爵のお宅です」
 そう告げて、トーマス青年は切り株に置いた荷物から手紙を出すと、馬上のコーネリアに渡した。
 それは、狩猟と舞踏会への招待状だった。 書状の宛て先を、コーネリアは声に出して読んだ。
「ダンバース子爵」
「一応、わたしのことです」
 別にてらわずに、トーマスはあっさりと言った。
 コーネリアは手紙を返した後、ひらりと馬から下り立った。
「失礼しました。 見知らぬ男の方が二人もいらしたので、驚いたのです。 コーネリア・ランズフォード・バーンズと申します。 私も、狩には行きませんが、舞踏会には招かれています」
「それはよかった」
 にわかに、トーマスは活気付いた。
「あなたがおいでになれば、会はいっそう華やかさを増すことでしょう。 まことにあでやかでお美しい」









表紙 目次文頭前頁次頁
背景:Star Dust
Copyright © jiris.All Rights Reserved
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送