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表紙

誓いは牢獄で  5


 領地の目印となっているモルニーの丘に次いで、右端が欠けたケルトの十字架が道の角に見えてきたとき、コーネリアはようやく胸を撫で下ろした。
「やれやれ、懐かしい我が土地だわ。 今朝早く出発したときより、ずっと明るくて楽しそうに見えるわね」
「それは気持ちが落ち着いたからですよ。 確かに広く立派なご領地ですが」
 馬車の歩みが緩やかになって、揺れは静まった。 ほっとしたオーガストは、内懐をごそごそやって、嗅ぎ煙草の包みを取り出した。

 丘を迂回すると、低い塀が広壮とした屋敷を取り巻いていた。 馬車がなめらかに門から乗り入れたのを見極めてから、中のコーネリアは座席にもたれ、ゆったりと目を閉じた。
 四年間頭を悩ませてきた難題が、ようやく解決したのだ。 重荷を下ろして、心だけでなく、肩まで軽くなったようだった。


 鼻の奥まで煙草の粉を詰めこんだため、オーガストは風邪声になった。
「うふん、それで後見人の方々はいつお見えで?」
「明後日よ。 ぎりぎりだったの。 オーガストさんにお願いしてよかったわ。 ちょっと心配なのは、あのダーリンプルだけれど」
「なんなら始末しておきましょうか?」
 普通の顔で、オーガストが怖いことを言うので、コーネリアは当惑した。
「そこまでは……。 それに、誰かに始末させるわけでしょう? また危険が増えるわ」
「お嬢様、いや、奥様の名前は絶対に出しませんよ」
「わかっています。 でも結構よ。 私は法律を犯してはいないから」
「そうですね。 堂々となさっていればいい」
「ホリスが余計な欲を出さなければ、ここまでしないで済んだのだけれど」


 間もなく、暖かみのある淡褐色の正面玄関が近づいてきた。 コーネリアは窓枠に手をかけて、小さく息を吐いた。
「囲い込みをしている連中に土地を売る計画なんか立てなければ、結婚してもいいと思ったのよ」
「あいつらは人の土地を巻き上げて、どんどん農地を広げています。 仲間内で相談して、小麦の値段を釣り上げたりしているらしい」
 良心的な弁護士であるオーガストは、法律の網をくぐって土地の買い占めに走る富農たちに、不快な思いを持っていた。







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