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 屋敷が火事になったと知らされて、大急ぎで戻ってきたフランソワは、小間使いの仕業と知って激怒した。
 それは、かわいがっている末の妹を殺されかけたアンリとシャルルも同じことで、三人は再び協力しあって捜査網を作り、シルヴィーの行方を探した。

 だが、さらに素早く行動を起こした一味があった。 三日後の朝、フランソワの元に連絡が届いた。 カレーの外れにある湿地帯の沼に、シルヴィーの人相書そっくりの女が浮いていたという知らせだった。
 下町の事情に詳しいジャンが、珍しく真面目な顔でフランソワに報告した。
「情報屋によると、ゴルドーニ親分の身内で『かかし』という仇名のあるジョゼ・レントが捕まったんですが、奴を密告したのが、そのシルヴィー・メランだったようです」
 フランソワは驚いて眉をしかめた。
「ゴルドーニ? あの泣く子も黙る凶暴なボスか? シルヴィーは虫も殺さぬ顔をして、いったい何を血迷ったんだ」
「わかりませんね」
 可愛らしいシルヴィーにちょっと気があったジャンは、溜め息をついた。
「小間使いの推薦状は偽物だったんですよね。 レントに正体をばらされそうになったから、先手を打って捕まえさせたんじゃないですかね」
「それとも、付きまとわれてうるさくなったとか」
 事実は後の方だったが、こうなってはもう、シルヴィーの本当の動機は誰にもわからなかった。 彼女は二度と口のきけない姿で発見され、持ち物はすべて奪い去られていた。


 噂は下町にもすぐに伝わった。 シルヴィーが逃げた日の内に、セルジュがすばやくゴルドーニに会って、裏切ったのはシルヴィー一人だと話を通しておいたからよかったものの、さもなければ兄のクロも疑われるところだった。
 暗い陰のある表情で、セルジュが下宿屋に駆けつけると、クロはおいおい泣いていた。
「誰だい、こんなひどい事しやがるのは!
 確かに欲張りだし我がままなところもあったが、そんなに悪いやつじゃなかった。
 俺たち三人、助け合って田舎から出てきて、さんざん苦労したあげく、こんなことに……」
 何も言わず、セルジュは幼なじみの背中を撫でてやった。 忠実な老犬を慰めるときのように。



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