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 翌日の午後、早馬を飛ばしてフランソワがパリの自宅に戻ってきた。 そしてまた、エレはどこだ! と一騒ぎ演じた後、マールも交えて三人で奥の書斎へ入った。
 エレが彼のいない間に娘まで巻き込んだと知っても、フランソワはそれほど驚かなかった。
「シャルルよりも剣が使えるおまえだからな、黙っているはずはないと思ったよ」
「それでね、お父様。 新しい仲間ができたの」
 もうエレには昨夜のうちに話したことを、マールは再び父の前で繰り返した。 フランソワは髭をなでながら最後まで聞き、少し考え、小さくうなずいた。
「裏通りには裏通りの仁義がある。 友情もな。 その男は知っているぞ。 アンリとわたしがシャルルのところへ連れていったんだ」
「へえ、そうなの」
 エレが面白がった。
「信用できそうな人?」
「友には忠実な人間だ。 我々に忠実かどうかは……時と場合によるだろうな」
 セルジュの理知的な緑色の目を時折かすめる油断のない光を、フランソワは思い浮かべていた。
「今夜八時に待ち合わせか。 ちゃんと来ればいいがな。 もっとも、裏切ればいずれはわかる。 あの酒蔵は二十四時間見張らせているから」
「えっ?」
 全然気付かなかったマールは慌てた。
「そうだったの?」
「もちろん。 抜かりはないさ。 向かいの建物に部屋を取って、どんな風体の男たちが何時に何人出入りしたか、すべて記録させてある」
「さすがお父様!」
 マールは感心した。 エレが少し気がかりそうに呟いた。
「本当は国務大臣の仕事でしょうに。 オリヴィエは何をやってるの?」
「あいつは頼りにならん。 金で地位を買ったやつだからな」
 フランソワはあっさりと切り捨てた。
「田舎者が寄り集まっているだけで調査はできんと言い張るんだ。 何か事件が起きないと取り締まれないそうだ。 起こってからじゃ遅いというのに」
「役人上がりはそういうのが多いわね」
 エレがいまいましげに相槌を打った。



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