表紙
明日を抱いて
 147 ゲームの輪




 二人一組になった客たちが短い変装話を考えている間に、テーブルが一つと椅子二つが会場の真ん中に据えられた。
「では次に、番号がたまたま合わなかった方たちの『当てっこゲーム』を始めます。 女子はこっちへ並んでください」
 八人のあぶれ女子のうち六人が、くすくす笑って顔を見合わせながら横に並んだ。 エイプリルは右端から番号札を渡し、まず一番目の女子を椅子に座らせて、スカーフで目隠しをした。
 それから、残された十二人の男子をぐるっと見渡して一人を選び、目隠しをした女子の前に座らせた。
「さあ、目の前にいる素敵な紳士は誰でしょう? まず、手を握り合って!」
 たちまちこの遊びは人々の目を引き付けた。 あぶれ男子最初のゲーム参加者は、やさしい目をした中学の用務員のアルフで、目隠しをしているのはドラッグストアの娘のリリーだったからだ。
 活発なリリーは、すぐ手を出してアルフの手を捜した。 アルフはためらいがちにやわらかくリリーの指を包んだ。 するとリリーは顔を上げ、アルフの右手の指を四本まとめて握った後、信じられないように小声で尋ねた。
「……アルフ? あ、えぇと、ギボンズさん?」
 苗字で言い直して真っ赤になったリリーは、いつになく初々しく見えた。
 すぐエイプリルが拍手をして、周りも続いた。 デビーが笑顔で訊いた。
「ねえリリー、どうしてそんなに早くわかったの?」
 あわててアルフから手を引くと、リリーはまだ頬を赤くしたまま答えた。
「中指に四角い指輪してるから」
「よく覚えてたわね〜」
 デビーはからかいの矛先を緩めない。 リリーが中学の頃から、アルフって大人でかっこいい、と友達に言いまわっていたので、彼女がアルフに憧れているのはクラスメイトの誰もが知っていた。
 リリーがそそくさと席を立った後、アルフもゆっくりと立ち上がった。 すぐに次の組が椅子に座り、今度はなかなか当てられずに手だけでなく顔まで撫で回すことになって、取り巻いて見ていた連中を大いに楽しませた。 うまく当てた女子と相手の男子は、抽選券を一枚もらえるとわかって、当てっこゲームはどんどん白熱した。
 知り合いがいなかった男女も、がっかりする必要はなかった。 目の前のゲームを楽しんだ後、部屋の一角を使って男子限定で『目隠し鬼』第一弾を行ない、捕まえた男子と捕まえられた誰かが抽選券を受け取った。 だからわざと捕まる者が続出し、足を止めてタッチされた人は罰ゲーム、という新しいルールが加えられた。


   





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