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146 まず仲良く
緑と赤の巨大なクス玉は、頑丈に作られていたらしく、なかなか陥落しなかった。
だが、まだ宵の口で元気一杯の客たちがなだれのようにボールを当て続けるうち、ついに外に張った紙が破れ、中からちらちら光るものが一斉に降って来た。
それは、金銀の紙に包んだお菓子だった。 ヌガーや蜂蜜クッキー、ジンジャーケーキにハッカ飴などだ。 みんな包みを開けてみて、好みでないときは近くの人と交換して口に入れていた。 男子の中には好きな彼女や妹などにプレゼントする者もいた。
そのうちに気づいた。 包み紙の裏に何か書いてある。 番号だ。
上からエイプリルの明るい声が響いた。
「さあ、柱のところに集まってください! 一番から四○番までは右端の柱に、四一番から八○番までは真ん中の柱、八一番から一二○番までは左端の柱のところにね!」
柱にはいつの間にか、ちゃんと集合番号を記した札が下がっていて、人々はがやがやと寄り集まった。 すると今度は、同じ番号の人を探すように指示された。
ジェンは五二番のボンボンを拾っていて、ジョーディは八五番のチョコレートだった。 ジョーディは相方をすぐ見つけた。 それはジェリーにくっついてやってきた兄のサムで、二人は肩を叩いて笑いあった。
ジェンがなかなか見つからないできょろきょろしていると、不意にハンサム・エディが現れて頭を下げた。
「麗しきお嬢さん、もしかすると五二番かな?」
「ええ、そうよ」
二人は番号を見せあい、エディはほっとして小さくウィンクしてみせた。
「今日の僕は運がいい。 バーティーに当たったらどうしようかと思った」
バーティーとはレジナルド・バートレットという高校の同学年の子で、親は食肉業者。 腕っ節が強くて荒っぽいので知られている上、美男のエディを目の仇にしていた。
確かにバーティーも八○番までの真ん中の柱に寄りかかっていて、普段よりいっそう凄みのある目で周囲を見渡している。 機嫌が悪いのはすぐわかった。
エディがジェンをかばうように背中をバーティーに向けながら、小声で囁いた。
「あいつ、五三番らしいんだ。 でも相手が見つからなくて、すごく不機嫌」
「お相手の番号がなかった方は、こちらへどうぞ!」
エイプリルの澄んだ声が、すぐそばで聞こえた。 見ると二階から降りてきて、グランドピアノが置いてある一段高くなったステージに立っていた。
相方が見つからなかった男女が、ざわざわと集まってきた。 ジェンが数えてみると、ちょうど二○人いた。 女性が八人で、男性は十二人だった。
エイプリルはてきぱきと、彼らに紙を渡した。
「このグループで顔と名前を知っている人はいますか? いたら紙に書いてください。 たまたま一人も知らないという方は、こちらへ」
そして、残っている大部分の客に笑顔を向けて言った。
「皆さん、変装してますよね?」
してます! という声が一斉に上がった。 するとエイプリルはいたずらそうな顔になって、第二のゲームを明かした。
「それでは、コンビになったお二人で、変装を使って短いお話を作ってください。 誰かと誰かが、どこで、何をした、というお話です。 たとえば」
偶然傍にいた古びたシルクハットを被った男子を引き寄せて、エイプリルは高らかに言った。
「『羊飼いの女の子と紳士は、牧場で出会って、逃げた羊を追いかけました』というふうに」
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