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126 若い日の夢
「あんな子たちを自分の娘の誕生会に呼ぶなんて、まったく気が知れない」
そう呟いて、ビル・メイトランドはワインをやや荒っぽく口に運んだ。 ジェンは黙っていたが、心の中で言い返していた。
──でもあの兄弟は、いつでも私を仲間に入れてくれたのよ。 ドナもそう。 家政婦の娘だからってバカにされたことは、一度もないんだから──
ワンダもそう感じたようで、穏やかな口調でビルに説明しはじめた。
「ロバートはジェンをいじめたかったわけじゃなくて、注意を引きたかっただけなんです。 小さいころ、彼はジェンに夢中で、いつもついて回ってました。 好きな子にちょっかいを出す男の子って、よくいるじゃないですか?」
「かわいいわね。 でもあのロバートがねえ。 あんがい純情だったんだ」
セリナが笑いを含んだ声で言い、ジョージも苦笑した。
「まだほんのチビだったワンダにまで見抜かれていたのか。 ロバートも形無しだな」
ビルの頬がわずかに引きつった。 だが鋭い目つきは、なごんできていた。
「わからないな。 そんな屈折した気持ちになったことがないからね」
ジョージはすぐうなずいて、二十年以上前を思い返した。
「君はいつでも迷わず直球だったからな。 はっきりしているところは、うちのトニーに似ているよ。 トニーは君より冗談好きだが」
「もう今はそうでもないよ」
メイトランドの声音に、不思議なわびしさが加わった。
「昔は、正しい道は一つだと思っていた。 努力すれば必ず夢は叶うと。 だが現実は厳しい。 正義も一つとは限らないしね」
「おいおい、君まで角が取れて普通のおじさんになってしまうのか? まだ早いよ、三五だろう?」
「六だよ。 後少しで三七になる」
それではこの人は、お母さんと知り合ったときには二十歳そこそこだったんだ──今でこんなにハンサムなのだから、青春真っ盛りのビル・メイトランドはどれほど美しかっただろう、と、ジェンは想像してみずにはいられなかった。 彼はジェンより明るめの金髪だが、ところどころに白金や金茶色の筋が入っているのは同じだ。 整髪料できちんととかしつけているものの、洗い落とせばやはりゆるやかに波打って、整った顔を優雅に囲むのだろう。 艶のある黒髪のコニーと並べば、まさに絵のようなカップルだったはずだ。
そこへピーターが一人で帰ってきて、何事もなかったように席に着いた。 セリナがさっそく小声で訊いた。
「あの二人は?」
「なんとか部屋へ戻っていきましたよ。 しばらくはおとなしくしてるでしょう」
テーブルの全員に聞こえるよう、ピーターは声を張って丁寧にはっきりと答えた。 だがその直後、横に座っているジェンの靴に靴を軽くぶつけて、合図を送ってきた。
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