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74 いつも通り
何をやっても器用なコニーは、傷の手当も素早くて上手だった。 間もなくミッチは落ち着き、居間の自分用の椅子にゆったりと腰を下ろして、青い顔をしているジェンに微笑みかけた。
「心配するな。 あんなヤローの言うことを気にしたらだめだぞ。 おれは一発であいつをのして、州境までぶっ飛ばしてやるつもりだったんだ」
「そうかい? 思い切り首を絞めてたように見えたが」
ビグスがぽんぽんとミッチの肩を叩いた。
「誰も見てなきゃ、あのままやらしてやってもよかったんだが、ドティが証人になって殺人罪じゃ割が合わんからな」
ドティとは下宿屋のおかみさんのことだ。 小太りで陽気で、なかなかのかんしゃく持ちだという噂だった。
ミッチが元気を取り戻したので、ビグスとカートは安心して冗談を言い合いながら、マクレディ家を後にした。 コニーは心から二人に礼を言い、明日のデザートに出すつもりだったルバーブのジャムを使ったパイを気前よくプレゼントした。
二人の助っ人が帰った後、ジェンは口ごもりながら、コニーに学校であったことを短く話した。 ジェンはできるだけパイクの言葉にあった毒を消し、母の受けるショックをやわらげようとしたが、敏感なコニーは涙眼になって、弱っているミッチにあべこべに慰められる始末だった。
「ほらほら、大丈夫だよ。 友達もみんな庇ってくれたそうじゃないか。 とくにそのジョーディだ。 馬で学校に通ってるって、前に言ってたな。 なかなかの子らしいから、もし高校も一緒にするんなら、付き合ってもいいぞ」
ジェンは目をむき、コニーは椅子から飛び上がりかけたが、二人ともミッチの眼が面白そうに光っているのを見て、ジョークを言っただけだとすぐ気づいた。
「いやだわもう、ミッチったら」
コニーが泣き笑いする横で、ジェンはきっぱりと言い返した。
「ジョーディはいい子だけど、私達、そんなんじゃないから」
「わかってるよ」
ミッチは真面目な表情になって、家族二人を交互に見つめた。
「おまえが来てから、うちはいいこと続きだ。 行きたくなきゃ、嫁になんか行かなくてもいいからな」
「ミッチ!」
コニーが夫の腕をこづき、ミッチは大口開けて笑い出して、すぐ顔をしかめて頭を押さえた。
「おっと。 明日は晴れならジャックたちと冬囲いを修理する予定なんだが、まだ動かすと痛いな」
「重いものを持つなんてとんでもない」
コニーが激しく首を振った。
「それに、今日は夕焼けが出なかったから、たぶん明日は曇りか雪よ」
コニーの予報は当たり、翌日は朝から小雪がちらついていた。 ジェンがいつも通り友達とにぎやかに登校すると、ジョーディがいつもの席に座って、ジェリーとふざけていた。 彼は特にジェンのほうを見なかったし、ジェンも同じだった。 パイクだけが消え、後には普通の授業風景が残った。
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