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72 意外な結末
残り少なくなったその後の授業で、パイクはほとんどしゃべらなかった。 主に生徒たちに問題を解かせ、できないと神経質に叱りつけて、なんとか教室の秩序を保って時間を過ごした。 ぴりぴりした雰囲気を、後ろの男子たちは面白がって目くばせしあっていたが、女子の中には、おびえて先生とできるだけ目が合わないように顔を伏せている子もいた。
終了の鐘が鳴ると、教室の全員がほっとした。 パイクは教材をまとめて、すたすたと部屋を出ていき、残した生徒達が一度ににぎやかになるのを無視して、早足で去っていった。
貰いっ子といっても、ジェンがマクレディ家の親戚の子だというのは知れ渡っていたし、東海岸から来た『派手な一家』がどんなに素敵だったか皆が覚えていたため、パイクはひがみ屋で無知なバカだということで軽く片付けられた。 それよりジョーディの身の上がひとしきり話題に上った。
「あいつ養子だったのか」
「だから親が学校に来ないのかな」
「なんで〜。 うちの伯父さんも結婚相手の子二人引き取ったけど、学校にはちゃんと挨拶に行ったぜ」
「ジョーディは大事にされてるとは思えないな」
ハウイがそう口をすべらせたとたん、情に厚いジェリーがいきり立った。
「なんだと? あいつにいじけたところなんかあるか? いつも堂々としてるじゃないか!」
「堂々としすぎてるよな」
美男のエディがのんびりと返した。
「成績はいいし、体格はもっといいしさ。 学年ダブってるんじゃないの? そんなにまじめに勉強してるように見えないのにさ。 なんだかおれたちより二つ三つ年上だって気がするよ」
ジョーディの親友のジェリーとジャッキーは言葉を失った。 確かに二人とも、ジョーディが一年どころではなく年上ではないかと感じたことはあった。 それにいろんな役に立つことを知っていて、だからこそ二人は引きつけられているのだった。
「もう戻ってこないかな」
ジェリーが寂しそうに呟くと、気楽なジャッキーにぽんと肩を叩かれた。
「そんなことないよ。 校長と喧嘩したんならともかく、パイクぐらいで学校止めたりしないだろ」
その日の午後になって、驚きの情報が電光のように学校中を駆けめぐった。 なんとパイクが学校をクビになったのだ! これにはハンプティ組のみんなもびっくり仰天した。
「こんなに早く?」
「あれしか原因ないよな」
「だとすると」
生徒達は顔を見合わせた。
やがてなんでも思ったこと言いのマージが、みんなの内心の呟きを代表して声を出した。
「ジョーディよね。 彼が学校側を動かしたんだ。 というより、たぶん彼の親がね」
「すっげー」
ジェリーがうやうやしく囁いた。
「あいつが親に大事にされてないなんて嘘だな」
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