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61 余興で爆笑
横にいたエイプリルが走っていってしまったため、右隣のポリーと笑い交わしながら見守っていたジェンは、不意に男の声で呼ばれてぎくっとなった。
その目に、ジョーディが立ち上がって走り出したのが見えた。 大変だ!
「ジェリー!」
しまった! 女子を呼ぶつもりだったのに、あわてて最初に目に入った男子の名前を呼んでしまった!
ジェリーは誰よりも驚いた。 まず最初に名前を呼んでから立たなければならないのだが、すっかり忘れてぴょんと飛び上がったとたん足をすべらせ、カウチからずっこけた。
彼が落ちてくれて、ジェンには幸いだった。 口がきけずにもがいている少年をすばやくよけて、カウチの空席に手をつけば、それで勝ちになった。
周りの爆笑の中、ジェリーには罰ゲームが待っていた。 エイプリルが重々しくささげ持ってきた二つの箱から一つを選び、それが何でも口に入れなくてはならないのだ。
大きい箱と小さな箱をせわしなく見比べながら、ジェリーはおずおずと訊いた。
「なあ、まさか食えないものは入ってないよな。 うさぎの糞とかさ」
また皆がどっと沸いた。 エイプリルは真面目な表情のまま、ゆっくりと首を横に振った。
「大丈夫。 せっかくのクリスマスにお腹をこわすようなことはしないわ」
それで少し安心して、ジェリーは大きな箱を選んだ。 それでまたからかわれた。
「おまえ、こんなときにも欲張るのかよ」
「ちげーよ」
相手が男子なら、ジェリーは強気だ。 すぐハンサム・エディにポンポンと言い返した。
「大きいほうなら中身も多いと、ふつう思うだろ」
「それで?」
「だからその逆を行ったんだよ。 ふつう小さいほうを選ぶと思うじゃないか。 だからきっと、まずいのは小さいほうだって」
「なんでもいいから、早く開けろよ」
とうとう拍手が起きた。 勢いに押されるように、ジェリーはゆっくり箱の蓋を開け、とたんに目をまん丸にした。
「え、これ食うの?」
「平気だって。 毒じゃないから」
「えー」
顔をしかめたジェリーは、それでも箱の底から薔薇のつぼみを拾い上げて、一口で食べてしまった。
「なんだ、花か〜」
「やさしいのね、エイプリル」
「クモとか入れときゃよかったのに」
勝手なことを言う野次馬たちに、エイプリルはにんまりして小さい箱を開いてみせた。 すると中に大きなゴキブリが見えて、女子はキャーキャー言うし、男子は笑いころげた。
「やっぱでかい箱にして正解だったか!」
「そうでもないのよ」
そう答えてエイプリルはゴキブリを平気で持ち上げ、また女子と一部の男子に嫌がられながら、蓋の上に置いた。
「これ特別製なの。 うちのコックさんがチョコレートとマジパンで作ってくれたのよ。 器用でしょう?」
「なーんだ」
「それでもこんなにそっくりだと、食う気しないな」
周りがしげしげと観察しながら批評していると、ピアノの前からアルフが立ち上がって歩いてきて、エイプリルに尋ねた。
「面白いね。 チョコレート好きなんだ。 もらっていいかな」
「ええどうぞ」
許可が出たとたん、アルフはゴキブリをつまんで、みんなのブーイングの中、おいしそうに食べてしまった。
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