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50 何かの兆し
雪だらけになって疲れきるまで、乱戦は続いた。 何人もがへたりこみ、大の字になって倒れる子が続出して、結局だれが勝ったでもなく、雪合戦は自然におさまった。
暴れるだけ暴れると汗をかいて、冷えたら寒くなってくる。 その危険をよく知っている子供たちは、立てるようになるとすぐ帰り支度を始めた。 ジェンはマージやエイプリルたちに別れを告げ、ゴードン家のきょうだいたちと身を寄せ合って家路についた。 あんなに激しくやりあっていたのに、アンソニーとピーターはもうけろりとして冗談を言い合っていた。
その様子を見ながら、ジェンはしみじみ言った。
「きょうだいっていいなあ。 わざわざ口に出さなくても通じるから」
ワンダはくすりと笑って首を振った。
「そうでもないわよ。 兄さんたち、ライバル心がすごいもの。 ピーターの体が大きくなってきたから、トニーは最近ちょっとあせり気味なのよ」
ピーターは本当に男らしくなった。 ジェンは半年見ない間に三インチは背が伸び、肩幅が広くなった乳兄弟を、いくらか寂しい気持ちで見守った。 こうして子供時代の知り合いは次第に遠い人になっていく。 ワンダとアンソニーがほとんど変わっていないのが救いだった。
特にワンダは、相変わらずジェンにべったりだった。 学校や近所の友達はそこそこいるけれど、ジェンのように何でも話せてすべてわかってくれる親友はいないし、これからもできないだろうと、ワンダは確信していた。
家ではゴードン夫妻が、くつろいで子供達の帰りを待っていた。 マクレディの家はこの近所では大きいほうだが、それでも成長したゴードン家の子がジェンと共にどやどやと入ってくると、居間はぎゅう詰めの雰囲気になった。
人見知りの母がどうしているか、ジェンは気になってコニーをそっと観察した。 そして、彼女が緊張していないのを見て取り、ほっとすると同時に、セレナの気配りに感謝した。 セレナはコニーの隣に座り、紺色の毛糸玉を見せて話しこんでいた。 縫い物、編み物、料理に掃除、家事はすべて得意なコニーに合わせて、今何を編んでいるのか説明しているのだろう。 二人の母の顔が、やっと帰ってきた子供達を見てパッと輝くのが、ジェンには嬉しかった。
「いやー、楽しかった! さんざん遊んで汗かいたんで、着替えさせてもらえますか?」
アンソニーが兄らしくコニーに許可を求め、コニーは急いで立ち上がってタオルを出しに行った。 その間にセレナが着替えの入った鞄を探し出し、ジェンは三人を二階へ案内した。
ワンダは当然のようにジェンの部屋に入り込んだ。 二人は笑ったり囁いたりしながらいつものように体を拭き合い、着替えてこざっぱりとなって下へ降りていった。 兄弟はもう居間に戻っていて、女の子二人が現れると、おそい! と言ってからかってきた。
ジェンは笑っていたが、やがて居間の空気が着替えの前とちがっているのに気づき始めた。 ミッチが珍しく、妻の肩におおっぴらに腕を回して横に座っている。 そしてゴードン夫妻はこれ以上ないほどにこにこしていた。
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