表紙
明日を抱いて
 49 氷上雪合戦




 その後も一時間ほど、ゴードンきょうだいは小川のほとりでサンドクオーターの子供達と遊んだ。 初めはぎこちなかったものの、もともと気さくな三人だけに、やがて打ち解けて一緒に騒ぎはじめた。
 おどろいたことに、いちばん無愛想なピーターがアンソニーより先に男子の群れに受け入れられた。 年が近いというのが大きかっただろうが、おそらく気取って見えないというのが一番の理由だろう。 アンソニーはあまりにも都会的で、スカしていると思われたようだった。
 アンソニーは別に気にしなかった。 彼をちやほやしたのは女の子たちで、気軽で優しいのでいつの間にか大勢のファンに取り囲まれ、スケートのターンを早くすべる方法など教えているうちに、川岸で雪だるま作りの隊長になっていた。
 一方ワンダは、持ち前の人なつっこさを発揮して、まずエイプリルたちと仲良しになり、すぐに他の元気な女の子たちとも友情の輪を広げていった。 母のセリナが編み物好きで、一人娘のために編みこみの手袋を作って持たせていたのも、好かれる原因になった。
「へえ、町の人って何でも店で買うのかと思った。 編み物上手なのね」
 ポリーが感心したため、ワンダはうれしくなって、ポリーが頭と首に巻きつけているふわふわのマフラーを褒めた。
「あなたのお母さんだってすごいじゃない。 とってもよく似合ってる」
 ワンダは何でも心から言う。 口先だけのお世辞ではない。 そんな誠実さが自然に伝わって、ポリーはワンダが好きになった。
 そのうち、ふざけていた男子たちが雪をぶつけあい出した。 それがどんどん広がって、本物の雪合戦になった。 女子たちは最初応援に回ったり、やじを飛ばしたりしていた。 そこへ流れ弾が飛んでくるようになり、わざとぶつける男の子も現れて、おとなしい子たちは逃げ、元気なおてんばは負けるもんかと雪球を作って投げ返しはじめた。
 雪だるま隊長だったアンソニーは、すぐ雪投げリーダーに変身した。 大きな手でびっくりするほど固い雪球をどんどん作り、そばにいる女子に配っている。 効果的な投げ方まで教えていると、ピーターの球がいきなり額に命中した。
「痛! やったな!」
 アンソニーは空中に飛び上がって勢いをつけ、逃げていくピーターの背中に容赦なくぶち当てた。 ピーターはそばの吹き溜まりに転がり込み、復讐の機会を狙いながら雪球の端を川の水につけて凍らせようとたくらんだ。
 ジェンはどちらにも味方しなかった。 ワンダはピーターのほうへ駆けていき、エイプリルは笑いながらアンソニー側についた。 マージはジェンと腕を組み合い、目を光らせて面白そうに兄弟の対決を見守っていた。  





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