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明日を抱いて
 42 学校の帰り




 翌日は土曜日で、学校は半日で授業終了だった。 月曜にいよいよ生徒会長選挙の公示があるというので、少女たちは同級のサリー・ニューウェルの立候補を応援すべく、放課後エイプリルの家に集まって作戦を練る計画をしていた。
 対立候補は隣の組のダグ・マッキンタイアだった。 運動万能の人気者で、おまけに金髪の美少年だ。 彼には一年のときから親衛隊ができていて、彼女らはどっちのクラスでもかまわずダグに投票するはずだった。
「でもサリーの農場からこの学校に来てる子が六人はいるわ。 それもたまたま全部男子なの。 これは貴重な戦力になる」
「うちで働いているレニーの長男が一年にいるわ。 頼めばきっとサリーに投票してくれると思う」
 ジェンは何とかして、サリーのために力になりたかった。 一方、マージは意外と楽観的だった。
「幸いというか、ダグは男子にそれほど受けがよくないでしょ。 親衛隊におせじを言うから、キザだって思われてるの。 だから今年はサリーに風が吹いてると思うな」
 候補者本人のサリーは忙しくて一緒にこられなくても、同級生たちは大いに盛り上がって、にぎやかにウィンターズ邸への道をたどった。
 その道中で、一行はびっくりするものを発見した。 新入りのジョーディ・ウエブスターがつやつやと美しい茶色の馬に乗って、小道をギャロップで走り抜けていったのだ。
「うわ、あの子、馬で学校に通うつもり?」
「別にいいじゃない。 おととしにもリーザ・シモンズが馬を使って登校してたわよ」
「あれは競走馬が年を取って処分されそうになったんで、かわいがってたリーザが学校に連れて来てかくまってたのよ。 結局お父さんが折れて誕生日のプレゼントにしたから、今でも牧場でのんびり暮らしてるって」
 いい話だ。 ほのぼのしながら、ジェンは手をかざして、さっそうと森に消えていく少年と馬を見送った。
「たぶん、ジョーディ・ウェブスターは遠くから来てるのね」
 マージが考え深そうに言った。
「ウェブスターは珍しい苗字じゃないけど、この辺りにはそういう名前の家はないもの」
「一緒に来た馬は、授業中はどうしてるの?」
 ジェンが訊くと、ポリーが教えてくれた。
「アルフが預かるのよ。 リーザのときもそうだった。 動物好きだし、世話代を払ってもらえれば、将来のコンサート用に貯めておけるから」
「学校に馬小屋があるの?」
 ジェンの問いに、エイプリルが軽やかに答えた。
「あるわ、講堂の裏手に。 でも馬を飼ってたことはないの。 前はロバとヤギがいた。 どっちも老衰で死んじゃったけど、アルフがよく面倒みてたわ」
 この土地で生まれ育ったエイプリルは、学校の事情にも詳しかった。





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