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23 読めない人
新しい友達ができて、母がぴったりの服を買ってくれて、ここへ来た初日からどんどんすばらしくなってくる。 ジェンはすっかり楽天的になって、新しい服をていねいに箪笥にしまってから、夕食の手伝いをしに階段を下りていった。
母は鍋つかみを使って天火から鶏を出していた。 ジェンは急に入って驚かせないように、戸口でそっと声をかけた。
「お手伝いできることは?」
コニーは熱気で赤くなった顔を上げ、早口で答えた。
「そこのじゃがいもをつぶして、皿のバターと混ぜて」
マッシュポテトだ。 よくゴードン家の料理人と作っていたので、ジェンは迷うことなくすぐ取りかかった。
マッシャーに力をこめて押しつぶしながら、ジェンは母の背中に語りかけた。
「すてきな服をどうもありがとう。 あれは教会に行くときの服?」
コニーは大皿に鶏の丸焼きを置き、煮た小玉ねぎと豆で周りを飾った。
「どこへ来ていってもいいのよ」
「ピンクのほうは普段に着るには美しすぎるわ。 ショーウィンドーでは目立っていたでしょう?」
コニーは答えなかった。 微妙に空気が変わったのを、ジェンは鋭く感じ取った。 本能的にまずいことを言ったのに気づいたが、何かわからないので言い直すことができない。 困ったままバターをせっせとポテトに練りこんだ。
鶏の支度を終えたコニーは、なめらかになったマッシュポテトの鉢を無言で受け取ると、牛乳と塩こしょうで味付けを始めた。 ジェンは珍しく言う言葉が見つからず、手もちぶさたに母の動きを眺めていた。
気まずい時間が流れた。 ジェンはもう母に話しかける勇気がなく、コニーはコニーで、いつも一人でやるくせがついているため、ジェンに頼む作業が見つけられなかった。
五分ほどどんよりした空気がたちこめた後で、コニーはようやく思いついた。
「あの真ん中の棚のお皿を三枚取って」
ジェンはやることができてホッとして、きれいに模様を見せて並んだ皿を下ろしてきた。
「はい」
そこでコニーは大皿の料理とパンと、取り分け用の皿三枚にフォークとスプーンを添えてを盆に載せ、ジェンに渡した。 食事室へ運んでいく短い間、ジェンは胸がしゅんと冷えていくのを感じていた。 さっきまであんなに気分がよかったのに、母が黙り込んだとたんにひどく気まずくなったのは、どういうわけなんだろうと悩んだ。
テーブルをセットしているうちに、ようやく気づいた。 母の表情が読めないからだ。 たいていの人は相手の言葉に反応する。 不愉快なときは自然に眉が寄るし、悲しいと目に力がなくなる。 だがコニーは違う。 ただただ無表情で、心が表に出ないのだった。
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