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21 友達になる
ずっと勤めているゴードン家の人々には、作り話は通用しなかった。 だから一家は全員ジェンの生まれを知っていたが、誰一人よそ者には話さず、家庭内の秘密としてジェンを大事にしてくれていた。
そのことを思い出すと、レイクウッドが懐かしくてたまらなくなる。 ジェンは過去を頭から追い払い、目の前にいるかわいい二人組に注意を集中した。
「ほんとに大丈夫だから。 うちまで来てくれる? 門の前まででいいの。 私にもう知り合いができたとわかったら、ミッチさんたち喜ぶと思う」
エイプリルとマージは再び顔を見合わせた。 それからエイプリルがにっこりと笑い、口の右横に愛らしいエクボを浮かべた。
「いいわ、喜んで。 私達、もう友達だもの」
マージも大きくうなずいて、ジェンの腕を取った。 他に誰も通らない道を、女の子たちは三人横に並んで元気に歩き出した。
出てきたときには何となく心細くて、学校までの道のりが遠かった。 しかし新しい友達と語り合いながら戻る道はいやに短く、あっという間に門が見えてきた。
茶色のがっちりした柵に囲まれた門は真ん中から左右に開く観音開きで、中央の合わせ目がもっとも高く、柵につながる両端をなだらかに低くした形をしていた。 エイプリルとマージのふたりは、門柱の横で立ち止まったが、すぐには帰らなかった。 ジェンが話す東部海岸の様子に夢中になって、聞き入っていたからだ。
「みんな水着で町を歩くの? うわ、恥ずかしい」
「町の道路じゃなくて、海岸。 砂浜のところに傘を立ててね、下に座ってる人もいるわ」
「砂浜ならミシガン湖にもあるのよ」
マージが自慢した。
「とってもきれいなんだから。 今度いっしょに見に行かない?」
ジェンはその申し出に飛びついた。
「行きたい! いつなら行ける?」
「いつでも。 だって夏休みだもん」
「私、お母さんに訊いてくる。 明日また会って決めよう。 ジェンはまだ私達の家を知らないから、ここで。 えーと、何時がいい?」
エイプリルの提案に、マージがすぐ答えた。
「今ぐらいでどう? 水に入って遊ぶなら、午後の暑いときが一番よ」
「そうね。 じゃ、午後の二時。 いい?」
二人に見つめられて、ジェンはすぐうなずいた。 ミッチさんはこの時間帯には無理に働かない。 昼食の後だからコニーさんの用事もないだろう。 だから手伝いを頼まれることはないはずだ。
コニーさん…… ジェンは心に雲がかかるのを感じた。 これまでずっと、ヒルダをお母さんと呼んできた。 これから【コニーさん】を何と呼べばいいのか。 今までは呼ばずにごまかしてきたが、いつまでもそれではまずい。
「たぶん大丈夫。 水着持っていく?」
二人がワッと笑い出した。
「そんな面倒くさいもの、いいって。 誰もぜったいに来ないところを知ってるから、パッと脱いで泳いじゃうのよ。 たまには恥ずかしがって下着で泳ぐ子もいるけど、透けてかえっていやらしくなるの」
「後がびしょびしょで大変だしね」
「持ってくるならタオルがいいわ」
「わかった」
ジェンは目を輝かせた。 これはちょっとした冒険だ。 面白そう!
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