表紙
目次
文頭
前頁
次頁
―78―
夫と妻になるのは楽しかった。
だが、披露宴のことを考えると、香南はだんだん、嬉しさより大変そうだなぁという気疲れのほうが大きくなった。
しかし、手配上手な蔦生のほうは、やる気満々だった。
「鳩や風船は飛ばさなくても、ちゃんとした規模にしよう。 僕は再婚でも、君には初めてなんだから」
「じゃ、準備期間が要るね」
「ああ、それなりに。 招待客を選ぶのが一番大変そうだな。 多少重々しくなるかもしれないが、乗り切ってくれたら、埋め合わせするよ」
「披露宴って、乗り切るものなの?」
「花嫁さんにとっては。 でも心配することない。 できるだけ助けるから」
二度目だもの、と、香南は心の隅で考えた。
客の名簿を作るだけで一ヶ月はかかりそうだ。 真夏の式は招待客に負担をかけるので、正式なお披露目は秋にしよう、と話が決まった。
翌朝、蔦生は香南をアパートに送ってから、車で出勤していった。 大企業のオーナー社長だから、運転手つきの車を使うほうが安全じゃないかと、香南は思ったが、蔦生の意見は違った。
「どんな優秀な運転手でも、他人だ。 信用できるかどうか、わからないから」
「そのせいでお酒飲まないの?」
「ああ、それもあるな、確かに」
二人は、車の傍で寄り添って話していた。 声を低くするためだが、くっついているのが自然になってしまったせいでもあった。
「もう一つ、篤美〔あつみ〕が、前の妻だけど、亡くなる前に悪い酒飲みになって、その姿を見て」
彼が香南に、先妻の具体的な話をしたのは、これが初めてだった。 香南はいくらか緊張した。
「どんな?」
「からむんだ。 それに、意地悪くなる。 別人のように」
「ストレス発散かな」
「それはないだろう」
蔦生は苦々しく言い捨てた。
「しょっちゅう浮気してたんだから。 あれだけ遊んでて、まだストレスって、働きづめのこっちはどうなる」
表紙
目次
文頭
前頁
次頁
背景:
ぐらん・ふくや・かふぇ
/ボタン:
May Fair Garden
Copyright © jiris.All Rights Reserved
SEO
掲示板
[PR]
爆速!無料ブログ
無料ホームページ開設
無料ライブ放送