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あの日あの時
48
新婚の夫を連れて戻ることは、前もって電報で知らせてあった。
それで、玄関の前には使用人たちが出迎えに並んでいた。 戦前に比べればぐっと減ったが、それでも合わせて七人だった。
珍しく髪に鏝〔こて〕でウェーブをつけたホプキンスが進み出て、祝辞を述べた。
「ご結婚おめでとうございます。 ささやかながら、ローストビーフにルバーブのパイと苺のプディングをご用意させていただきました」
「ありがとう。 着替えがすんだら一時ごろに食べます」
エマの答えは穏やかだが、どこか冷たさがあって、ロディが驚いたようにチラッと横目で見た。
エマの予想通り、新婚夫妻の部屋として、屋敷で一番眺めのいいマーゴの寝室が掃除されていた。
雑用係のジョンストンとスミザースが、トランク類を二階に運んだ。 その中から、エマは地味なツイードのスカートと薄いブラウスを、ロディも同じくツイードの上着とズボンを出して、旅行着と取り替えた。
ロディのアスコットタイを整えた後で、エマは彼と寄り添って鏡に姿を映してみた。
「典型的なイングランドの田舎者ね」
「地方紳士と言ってくれよ。 ねえエマ、肩丸出しのドレスより、この君のほうがやっぱり好きだ」
「私も、タキシードより肘当てつきの上着を着たあなたが好き」
腕をからませて窓辺に座り、首筋や耳の後ろにキスしあっていると、形式的なノックの後すぐにウィンプルが入って来た。
「お食事の支度ができました」
ロディの肩から手を離して、エマは答えた。
「今行くわ」
それから、さりげなく付け加えた。
「そうだ、お父様の書斎に置き忘れたものがあるの。 ちょっと一緒に来て探してくれる?」
「はい」
特に疑問を持たず、ウィンプルはエマに従って寝室を出、階段を下りた。
書斎はカーテンを締め切ったままで、家具には白い布がかかり、時間に置き去りにされたように見えた。
「これでは暗くて見えませんね」
窓に近づいてカーテンを開けようとしたウィンプルの背中に、エマの声が飛んだ。
「ねえ、デラ。 なぜロディを犯人に仕立てようとしたの?」
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