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あなたが欲しい
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事務所でコンウェイに新聞を見せられて、エイドリアンはあきれ返った。
「婚約って……フィリパさんは逃げ出しているし、お互いろくに顔も知らないはずなのに、どうしてこんなことが!」
コンウェイは顎を撫でた。
「おそらくマクミランは、フィリパ嬢から全財産を取り上げるのを諦めたんだろう。 そして、ガンツと取引したんだ。 持参金として彼女の財産を山分けにしようとか何とか」
エイドリアンは歯噛みした。
「勝手な奴だ! でも、当の相手がいないのに、どうやって結婚させるつもりなんでしょう!」
そこで、驚いているだけのエイドリアンと異なり、コンウェイは軽い焦りの色を見せて考えこんだ。
「ちょっと推理してみたんだが、フィリパ嬢はほとんど外出せず、たまに出るときにはいつもヴェールをかぶっていたんだな?」
「そうですが」
「じゃ、替え玉が充分に通用する。 きっと特別許可を取って、誕生日が来る前に式を挙げてしまうぞ」
「それは結婚詐欺です!」
「確かに。 だが、インチキと証明するためには、本物のフィリパ嬢を連れていかなくちゃならない」
興奮して振り回していたエイドリアンの腕が、脇に落ちた。
「ええ」
「この国の慣習法では、後見人の権限は大きい。 法律的には未成年のフィリパ嬢は、正当な理由がない限り、後見人の取り決めに従う義務がある。 だから、姿を現したとたん、本当に結婚させられてしまう」
「そんな!」
どっちに転んでもマクミランの思う壺だ。 救いの手を求めて、エイドリアンの美しい眼がコンウェイをひたすら見つめた。
「何か……何か手段はないでしょうか。 フィリパさんだけでなく、僕も助けると思って」
コンウェイは、眉を八の字にして、しばらく部屋を行ったり来たりした。
それから顔を上げ、きっぱりと言い切った。
「略奪結婚だ!」
「は?」
ぼうっとした表情のエイドリアンを厳しく見つめて、コンウェイは繰り返した。
「略奪さ。 君の方がさらうんだ。 つまり、フィリパ嬢と駆け落ちしろ!」
返す言葉がなく、エイドリアンの口がポカンと開いた。
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