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――ラミアンの怪物――

Chaptre 47

 せわしなく見回していたメイヨーの視線が、一見なにもない左側の壁に止まった。
「そういえば、最初にあの女と護衛官を見たとき、隣りの部屋の扉を開けて出てきました。
 どこかに、左隣りへ通じるドアがあるはずです!」

 三人は壁に取り付き、押したり叩いたりした。 初めからそこにあるとわかっている場合は、見つかり易い。 間もなくラプノー兄が暖炉の脇に、人ひとりがくぐれるほどの小さな隠し扉を発見した。
 すぐに引き開けてもぐりこもうとするジャン・ピエールを、ラプノーが引き止めた。
「待て。 ここは一度に一人しか入れない。 向こうで待ち伏せされたら危険だ」
「なるほど」
 すぐにジャン・ピエールは体を起こした。
 彼を見張りとしてそのまま残し、ラプノーとメイヨーはまた廊下に出て、改めて隣りの部屋に入ることにした。

 その扉には、鍵がかかっていた。 ラプノーが再び鍵束を取り出していると、階下からおそるおそる、二人の侍従が階段を上ってきて、後ろから顔を覗かせた。
 先頭に立った三十がらみのルベルという侍従が、震え声で尋ねた。
「ナダール様が殺されたって本当ですか? いったい何が始まるので?」
 ラプノーは唇を引き締め、短く答えた。
「姫を襲った犯人が中にいるのだ」
「なんと!」
 後ろについてきたクレマンが、袖をまくりあげて、手に持った棍棒を見せた。
「わたしもお手伝いします。 やっつけさせてください!」
「そう血気にはやるな」
 たしなめると、ラプノーは鍵を差し込んで錠を外し、用心しながらゆっくりと扉を開いた。

 その部屋は、ほとんど暗闇に包まれていた。 隣りの水晶の間よりずっと窓が小さく、外の光が入りにくいためだ。 メイヨーが壁から外した松明を受け取って、ラプノーは、まず腕だけを扉の中に差し入れた。
 とたんに、ヒュッという風切り羽根の音がした。 素早く腕を引っ込めたラプノーのすぐ横、戸口の縁に、小さな矢が突き刺さってブルブルと震えた。






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