三人は石のベンチに陣取り、テーブルに積み重ねた小枝の山を崩さぬように、一本ずつ取る遊びに熱中した。
勝ったのは、一番チビのシュゼットだった。 兄のギィも器用なのだが、活気がありすぎて、つい別の枝に触れてしまう。 崩れて悔しがる少年が、また山を積み上げて再戦しようとしている間に、コリンヌは重い腰を上げた。
「今はそこまで。 私は宴会の後片付けをしなくちゃ」
「終わったら、また来てね! ぼく、部屋からカード持ってくるから」
「来られたらね」
手を振って、コリンヌは家の中に戻った。
二人のちびたちは、シルヴァンが最初の結婚で得た子宝だった。 彼の妻は三度目の出産で世を去り、残された子供たちは、父親のいうことしか聞かないで日がな一日中戸外をうろつき回る、浮浪児のような生活を送っていた。
近所のもてあまし者だった子供たちがガラリと変わったのは、父のシルヴァンがだぶだぶの服を着たコリンヌを連れ帰った翌日だった。
それまで家中で采配を振るっていた家政婦が、コリンヌの存在に我慢できず、あの娘を追い出すか、それとも私が出ていくか、二つに一つ、選んでください! とシルヴァンに迫った。
彼女としては、当然シルヴァンが自分を取ると思っただろう。 しかし、彼は少し考えた後、家政婦に暇を出した。
とたんに、思いもかけないことが起こった。
かぎ裂きだらけの服をぶらさげた子供二人は、家政婦が憤然と馬車で出ていくのを見届けてから、あんなに入りたがらなかった家に飛び込んできて、父親に両側から抱きついた。
つまり、元凶は家政婦だった。 しつけと称して子供たちを叩き、少しでも言うことをきかないと、お母さんが幽霊になって怒りに来ますよ、と子供たちを脅した。
そのせいで、二人は寝室で寝ることができないほどおびえてしまったのだった。
子供たちの感謝は、結果的に家政婦を追い払ったコリンヌにも向けられた。 彼女が元気を取り戻すと、馬に乗れるし犬に芸を教えることもできるし、おまけに木登りまで上手なオテンバだとわかったので、なおさらだった。
子供たち二人が強力に推したから、コリンヌは家政婦の後釜になれたようなものだった。
コリンヌはあわただしく台所に入り、シードルを飲みながら世間話をしていたメイドたちをせきたてた。
「もう半時は過ぎたわ。 食器を下げに行きましょう」
「はい」
再び盆を手に持って、召使の一隊が廊下を進んだ。
客人たちはなごやかに談笑していた。 コリンヌが改めて杯とワインを配ると、その姿を目で追っていたシルヴァンが、不意に声を出した。
「皆さん、今日の料理に満足されましたか?」
「もちろんです。 ここのご馳走は、いつ来ても心地よい満腹感にひたれますな」
組合長が目を細めて答えを返した。
シルヴァンは二度静かにうなずくと、やや硬い声で言葉を継いだ。
「家庭の土台は、気立てのいい妻とかわいい子供、それにおいしい料理だ。 そうでしょう、皆さん?」
笑いと賛成の返事があちこちから聞こえた。
シルヴァンは、更に早口で続けた。
「わたしももう一度、家庭の味を堪能したくなりました。 間もなく再婚の運びになっても、皆さん驚かないでいただきたい」
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||