―１―

　絵のうまいひとねえ・・・・

『リアルなのがいい。　ＣＧみたいなテカテカしたやつじゃなく、こうもっと深みがあるっての？』

　深み？　深みって、なに。　絵の具ぬりまくり、かな……

『バーンと看板張って、差つけたいんだ。　ぱっと人目引いて、その上深みが……わかんねえかなあ』

　わかんねえよ。　オレさま体育会系。

「注文が多すぎんだよ。　バカ隼人」
　足元の小石を、思い切り蹴った。　なんかムカつく。　いや、そんなにはムカつかないが、 なんかムラムラ……じゃなくて！

　足を止めたとたん、後ろでブレーキ音。　ウザイぞ、そのキーッて音は。
　手入れが悪い。　こぎ方が悪い。　おまけにここは歩道だぞ。　えらぶってスピード出すなコラ

　横をチャリがすり抜けていく。　ひょろひょろ走るから、Ｇジャンのすそが腕に当たった。

　瞬時に反応した。

「引ったくりかあ！　このおー！」

　声より先に、足が出ていた。

　グッ　ガキッ　ガッシ〜〜〜〜ン 　ゴン

　２メートル持ちこたえたが・・・・倒れた
　ゴン、は、頭が並木にぶち当たった音だ

　やばい　　　回れ右して、逃げた。